安元亮祐 展 – 静けさの中 –

Ryosuke Yasumoto Exhibition

2003年5月 5日(月) - 6月 1日(日)

■ DMテキスト
時間が時を忘れたかのような空間

私は空虚の中に入り込み、虚空を眺める

真昼の月、
静けさの漂う館、
グレーの壁、
茫々と荒れ果てた道

遥か彼方に遠ざかってしまったはずの原風景

呼び覚まされた記憶は、
怠惰な喧噪と習慣から自らを解き放つ

■ 安元亮祐プロフィール
1954年、兵庫県 姫路市生まれ。
1972年に東京教育大(現、筑波大)付属聾(ろう)学校美術 専攻科入学

幼い頃、高熱が原因で聴覚を失う。
小学校の頃から絵に熱中、画家になろうと決意する。
学生時代から独特の色彩感覚など日本人離れした感性が際立っており、頭角を現わす。

1988年(34歳)には安田火災美術財団奨励賞受賞。1989年セントラル美術館油絵大賞展・佳作賞受賞。具象絵画や彫刻の新人登竜門といわれる第27回昭和会展(日動画廊主催)では昭和会賞を受賞し一躍注目を集める。

特徴的な画風にはマリオネットのピエロ,フルートやトランペットを奏でるジプシーたちが月明かりの下でいつも踊っている。鉛色したブルーグレイの空、人魚の棲む浜辺、枯れかけた花、降り注ぐビーズの雨は見知らぬ街を濡らし、記憶の断片を紡ぐ。窓からこちらの様子を伺う見知らぬ月の住人、刻印された街。そんな幻想的な世界は多くの人々を惹きつけ、魅了してきた。

■ レビュー
画廊香月オープニング作家である安元亮祐展。約2年ぶり、そして11回目のexhibition。
 
「絵は考え込むのではなく、無心に取り組むもの。」そんな一貫としたスタイルで心の回路を通過した心象風景を描き続ける安元亮祐の2003年度の新作展です。グレーを基調とした哀愁を帯びた色調で、繊細で深みのある画面が、見る人の心に詩情を漂わせます。
 
ピエロやサ-カス、言ってみれば 作家自身の夢、虚構の迷宮があらわれてきます。描かれる対象は月や太陽、そして宮殿のような館、そして馬や樹木。「自分というのが分からない。自分が何を考え、どんなことに興味を持って 。どこに行こうとしているのか…..」そうした揺れる心の ありようをサーカスに託しているのかも知れません。
 
「絵は自分の分身なのだから、絵は自分の魂なのだから、魂は地球より重いのだから」、安元亮祐の絵には動きがある、そして魂があると言われます。訪れたことも、見たこともない街角なのに、なぜかしらなつかしい記憶が呼び覚まされます。静寂でしんとしながら、どこかしら温かい魅力をたたえた神秘な世界です。

■ Opening
5月10日(土)pm4:00~ 「安元亮祐を囲んで」