Kai Yokota Exhibition
1999年11月20日(土) - 12月12日(日)
■ DMテキスト
海さんは実に反応が早い。対象が彼に「ここを描けよ、これを描けよ」と呼んでくれるのかもしれない。そして、それらがおもしろいように次の形となって表れる。だから横田海の個展はそのたびに違った展開を見せる。必ず新しいものが顔を出す。この新しさはいったい何なのだろう。
<高橋健司>
■ 横田海プロフィール
1934年東京生まれ。
九州天草で育つ。
1968 21歳で上京、新宿美術研究所にて麻生三郎、山口長男の指導を受ける。
1977 フオルム洋画研究所入所
現代画廊の洲之内徹に見い出され、全国の画廊にて展覧会を開催する。
横田海と接していると、それだけで自分の内側からエネルギーがむくむくと盛り上がってくるのが分かる。
横田海は勢いがいい。きっぷがいい。その生き様が絵にストレートにぶつけられる。
それは横田海が人生を芸術に捧げ、美を極め、紡いでいくことに賭けていることが伝わってくるであろう。日々、創造し新しいものに向かっていく姿勢がみなぎっている。
あの現代画廊・洲之内徹氏に見い出された。
求める精神性を長谷川利行にダブらせた時期、洲之内徹氏に指摘され、さらには、そのまま突き進むよう励まされたと言う。
90年代に入り、40代になった横田海の画風は大きな変化を遂げた。
風景などを中心に描かれていた具象から抽 象へと変わっていった。
もちろん具象に行き詰まったからではなく、精神的無頼派である自由奔放さからの必然 的な道程であった。
具象からたたきあげられた抽象は、絵に奥行きが広がり深みが増している。しかも、それでいてさわやかに織
りなされた色彩がさわやかささえ漂わせている。
「本来、完全なる抽象なんてないんです。そんなものは猫にでも描かせておけばいいんです。
僕のは具体的な抽象、感情を持った人間自身から生まれる具体的な経験された抽象なんだ」
と横田海は語る。
■ レビュー
画廊から
打ち明けたはなし、今年は、カイさんの個展はできないのではないかと思っていた。
年の初めに、カイさんが 担いで見せに来た、その個展のための絵がよくなかったからである。
去年一年、カイさんが遊んでいたとか、気を抜いたとか、変な商売気を出しはじめたちとかではない。
まさに その反対なのだ。
どうよくないかというと、気負い過ぎ、力み過ぎて、絵具が変にギトギトし、絵が重たくなり 、ひとりよがりになり、当人の気持とは裏腹に、それだけ甘くもなっているのだ。 こりゃあいけないよカイさん、あんた思い違いをしているよ、と私は言った。
とはいうものの、中には何枚か はいい絵があった。
このリーフレットにも載っている8号の「赤い家の風景」や、4号の「少年の像」などがそれである。
だが、結局、その絵もいっしょに返した。二枚や三枚では展覧会はやれない。
カイさんも、それを家へ 持ち帰って、それを睨んでもういちどやり直すと言う。
それにしても、個展の一回分の絵が溜まるには当分かか るだろう。今年はとてもだめだな、と私は思ったのだった。
ところが、それからふた月ほどして、カイさんがまた三十枚以上の油絵を持って来たのには驚いた。
小品ばかりとはいえ、そのあいだにそれだけ描いたのにも驚いたが、見事に彼は立ち直ったのだ。
こんなことは殆どあり 得ないことである。一年間の、しかも自分でいいと思って打ち込んできた仕事を捨て去るには勇気が要る。
というだけでなく、自分を甘えさせないきびしさと、絵というものに対する、本当の意味での謙虚さがなければやれない。
私は、初めからカイさんとは一生つきあうつもりでいるが、やっぱりいい男だなあと、更めてつくづくと彼の 顔を見た。
<洲之内徹>
■ Opening
11月20日(土)4:00pm~ 「横田海を囲んで」
11月21日(日)12:00pm~ トーク&トーク 横田海 x 高橋健司