岸田淳平 展 – 二千年の冬色 –

Junpei Kishida exhibition

2000年12月2日(土) - 12月17日(日)

■ DMテキスト
こんな人生があってたまるか。
だけど、涙もかれる。せつなさを、言葉にすると嘘になり、絵にするとつまずく。
それが人生とはおもわないが、そんな人の生もあるかな、とおもったりする。
二千年の流れのなかに、ひとつの生として、たしかにあった。
それだけだ。
いまも、いまも、時はすぎてゆく。    
<岸田淳平>

■ 岸田淳平プロフィール
1943年 大阪生まれ
1966年 関西学院大学心理学科卒業
1981年 第12回版画グランプリ展、サロン・ドートンヌ展
1982年 第4回現代版画コンクール展、第50回日本版画協会展、第32回モダンアー展、第10回イビザ・ビェンナーレ展
1983年 第1回版画大賞展
1984年 シロタ画廊で初めての個展、第15回国際美術展

■ レビュー
ぼくは、絵が色や形で成り立つという常識を、常識としては持っていないのかもしれない。なにか、それ以上の思い込みを、絵に対して抱いているのかもしれない。
 
何年前だったか、たしか、まだ年号が昭和の頃、板橋区立美術館に長谷川利行のまとまった展覧会を、古い女ともだちとみに行った。ぼくたちがあの白という色を、色をつくる色としてはしゃいでいた頃、この画家はもうとっくの昔に、野垂れて、死んでいた。だが、利行の色は、どの色も快活に生きている。世間の人の言うところのカラリストとはちがう。なによりも、白を白の色として、描いている。すこしもはしゃいではいない。ちいさな厚紙にちいさな林檎が三個、油絵具で描かれていた。画面のほとんどが白く、明るかった。だけど、その三個の林檎は、実に哀しく、実に淋しく確実に存在していた。
 
ああ、もう白い色は、使えないな。その絵の前で、ぼくは、わけもなくそうおもった。
ぼくの目の前が、冬の暗い海のようにおもえた。
<岸田淳平>

■ Opening
5月22日(土)4:00pm~ 「岸田淳平を囲んで」