斉藤真一 展 – Lime Light –

Shinichi Saitoh Exhibition

1993年4月 3日(土) - 4月18日(日)

■ 斎藤真一プロフィール
1922 (大正11)岡山県生まれ。
1948 東京美術学校(現芸大)卒。
1959 バイクでヨーロッパ各地を旅行。
1959 藤田嗣治を訪ね,日本の美は東北にあると啓示を受ける。
1961 津軽三味線の音色に驚き、古老より瞽女を教えられる。
1961 以後10年かけて越後瞽女宿300軒を巡り亡き瞽女200人を発掘。
197 文春画廊で越後瞽女日記展。
1973 エッセイストクラブ賞受賞。
1975 お春瞽女物語り展。
1977 パリ個展開催。
1978 絵日記「瞽女を訪ねて」刊。
1979 さすらい斉藤真一展/池袋西武。
1985 明治吉原細見記展/西武アートフォーラム
1985 作品「吉原炎上」が東映より映画化。日本橋高島屋個展。

■ レビュー
七十二才の巨匠・齋藤真一の個展を九州で初めて開催。

日本中の美術館にその作品は収蔵され、45年以来、東北の描き続け、ひとつの社会現象とまで言われた。
 
期間中は県内外から、数えきれないほどのファンが訪れ、それぞれの作品との出逢いを語ってくれた。初日に駆けつけてくれた27歳の女性は、5年前に画集を見て「この作品には官能がある」と触発され、三味線と小唄を習い始めたと言う。
また齋藤と同世代の男性には「生きている内に、これだけの作品を一同に見せていただけるとは….。ありがとう」と感謝され、こちらの方が感激させられてしまった。
 
なぜ彼の作品は時代を越え、これほどまでに支持されているのだろうか。その魅力は何といっても人間の現実を直視しているからだろうと思う。孤独や悲しみ、失恋や苦を。あるいは祭り、正月など、何気ない日常の風景を、重くなく、むしろユーモラスに描き、それが見る人の中により深い共感を呼び起こす。
 
それはイタリア映画、フェリーニ監督の「道」や五社英雄監督の「吉原炎上」に描かれた生身の女の人生だったりする。
 
しゃれたインテリア風の絵が多い、今のアートシーンの中、彼の作品は、忘れかけていた命の源泉みたいな記憶を呼び覚ましてくれるのかもしれない。